現在の主な電力供給源である、原子力発電、化石燃料発電、水力発電。その他にも、太陽光発電、風力発電、バイオマス、地熱発電からの供給が可能です。
これら多様な供給源を組み合わせて、国の電力供給は成り立っています。
ここでは、環境保護団体連盟、Umweltallianz(ウムヴェルトアリアンツ)が提案する,
エネルギー戦略「Strommix 2035 100PRO」をとりあげます。
このページで掲載する内容はこのプランの概要パンフレットを要約したものです。
パンフレットの完全版は以下のリンクからご覧頂けます。
数少ない自然な流れが残されている小川やふるさとの景色を犠牲にする事なく、十分な電力を100%国産・再生可能なエネルギーで完全にまかなう事は可能です。原子力発電とガスを使わない電力への道*)は、スイスの産業や雇用創出、ノウハウの蓄積にも大きな利益をもたらします。挑戦を求められているのは:技術者、研究者、商工業者、政治家、官庁の人々、そして環境保護者たち。そして最も重要なのが「わたしたち」=スイスの一般人とその消費スタイルです。
2010年のスイスの電力の最終エネルギー消費量は2035年まで安定するか、または少し減少するでしょう。2035年の電力生産ミックスは原発と化石エネルギーによる火力発電からの電力を含みません。 これらの予測は効率性を高める事により可能になります。「高効率」は 「100%再生可能エネルギー」の基盤です。
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*)連邦閣僚のエネルギー戦略では、脱原発から100%再可エネへの過渡期にはガス発電を使う計画になっている。
2010年にスイスの専門コンサル会社、INFRAS社とTNC社が共同計算し直した「脱原発しない」場合のコストは420億スイスフラン。つまり、原子力・ガス発電を使わない電力供給シナリオを選択する場合、この420億フランを予算にできるのです。
表が示すように、電力利用の高効率化と国産の再生可能エネルギーへの投資は、正味現在価値(NPV)に関しては国民経済的にほぼ完全に回収可能、マクロ経済的にはプラスの効果があります。対して新しい原子力・ガス発電所は国民経済的には、より高額な選択肢となります。
節約的な家庭・中小企業の電気代は、高効率化による節電・省エネルギー税の還付金*により低く収まり、太陽光発電や風力発電設備も継続的にコストが下がっていくでしょう。こういった供給源の多様化と並んで、スイスにあるダム、揚水設備といった高い生産予備力の活用と、外国との提携が安定供給を可能にします。
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* Lenkungsabgabeをここでは省エネルギー税と訳している。エネルギー消費に対して課せられた課徴金からの収入は、国民および企業に平等に還付されるため、省エネする消費者ほど得をする。エネルギー代を上げ、省エネを促す仕組み。既に化石熱源には導入されている。
世界的に資源のひっ迫が進む中で、スイスでは生産電力の40%が全く利用されずに失われています。スイスの電力市場では、浪費と無関心が意識的に促されてきました。過去30年間で電気は安くなり、ほぼ同じ割合で、消費量は増加しました。コストがかからないものについては、人は考えないものです。
より高効率な電力利用のための適切な情報が乏しいこと、安い価格、電力販売業者の強力な組織に対抗できるような高効率化への強力なロビイング団体の不在など、多くの要因が電力浪費を後押ししています。電灯・空調・ボイラーの付けっぱなし、電力を2、3倍も消費する低品質の電気製品の普及など、これら『無用の運転』と『効率の悪い機器』の技術的な節約ポテンシャルは、総消費のおよそ40%にも相当します。この節約ポテンシャル、そして浪費の事実に無関心であることは、およそスイス的ではありません。
近年の飛躍的な技術革命により太陽光発電の効率は向上し、生産コストや材料消費の低減化が進んでいます。その結果、太陽光発電が実用的で、市場競争にも打ち勝てる新技術であることが実証されています。石油やガスの確保、採掘がますます難しくなる状況を踏まえると、太陽光発電の担っていく役割はとても重要です。スイスの総電力需要に占める太陽光発電の割合は現在のところ0.1パーセントです。将来的には24.6パーセントまで増加させることが可能です。パネルの設置に必要な面積は、屋根やファザードだけで十分にあります。電力の明るい未来には不可欠な技術です。
水力発電はスイスの電力総生産量の54.8パーセントを占め、山岳地帯を多く有するスイスの特徴を生かした再生可能エネルギーです。1970年代は総発電量の実に90パーセントを占めていました。技術的に利用可能な水力発電のポテンシャルをほぼ開発しきっている現状を考慮すると、新設よりも現存施設の効率化をはかることが賢明です。また、水力発電だけにとらわれず、太陽光発電などの新技術の可能性に視野を広げることも大切です。近年では法律により水力発電で生じる水系環境ダメージを緩和する対策がとられるようになっています。
スイスには現在30基の風車しかありません。再生可能エネルギーを利用した電力自立を実現するためには、2035年までに400基に増やす必要があります(電力ミックスの2−3パーセントに相当) 。技術の進歩により、内陸部でも効率よく発電できるようになりました。風力発電の大きなメリットは冬期の電力需要ピーク時に多く発電することです。重要なのは、周辺の住民や自然環境との共存です。計画初期段階からすべての関係者の参加を促し、情報公開や話し合いの場を持つことで、信頼関係を築き上げることが成功への鍵となります。
バイオマスとは家畜の糞尿、農業の収穫残渣、台所の生ゴミ、下水処理場の汚泥、木質バイオマスなどです。それを微生物の働きでメタンガスに換えたり、直接に燃焼させることで、電力と熱を作ります。バイオマス発電は、小回りが効き需要にあわせて生産できるので、風力と太陽光発電を補ううえに、 農村部の地域経済活性化にも繋がります。スイスではバイオマスで現在2.4テラワット時の電力が生産されています。2035年までには電力ミックス内のの13.1パーセントに相当する8.3テラワット時の発電が期待されます。
この情報は2012年に以下の情報源から公開されました。
Umweltallianz (ウムヴェルトアリアンツ):
http://www.umweltallianz.ch/de/stromzukunft.html